時計の音が嫌いだった。

楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


「お嬢様、そろそろお戻りになりましょう」

透き通るような白い手が、真っ白いシロツメクサをばらまいた。


今日は一日中不機嫌な顔をしている。

鏡を見なくとも、それは幼いながら自覚できていた。



「楽しい時間も、終わってしまうことが分かっているとつまらないのね」



深くため息をつきながら立ち上がる。



また、退屈なお城へ戻るのだと思うと憂鬱で仕方がない。


本当はまだ遊んでいたい。
お城じゃないどこか遠くへ連れ出して欲しい。


わがままはいくらでも言えるけど、それを言ったところで世界は変わらないことを知っていた。