初夜の時のようなときめきを覚えた。

心が離れていないという証は触れ合った時の温もりであり、それが確認できたならば、もう止まることはできない。

半ば無理矢理朧の唇を唇で塞ぎ、腰を抱き寄せてゆっくり覆い被さって押し倒した氷雨は、この時はじめて本音を口にした。


「お前の中で俺はもう一番じゃないんじゃないかって思ってた」


「何を言っているんですか…望のことは大事だけど、私はあなたが居なければもう生きていけないんだから」


急に恥ずかしくなったのか両手を交差させて胸を庇っている朧の純情さにきゅんとした氷雨は、そのしながやかで瑞々しい首筋に唇を這わせながら吐息をついた。


「望に憑かれてるせいでお前は一日に一度は必ず俺を他人でみるような目で見る。俺はそれがつらかったし、このまま忘れら去られるんじゃないかって本当は怖かったんだ」


「私を怖がらないで。私だって忘れたくない。お願いだから、私を捨てないで」


「なんでお前はそうも後ろ向きなんだよ。そんなの全否定だ」


互いの肌は熱く、その快楽に身を堕としそうになりながらも、なぜ朧が自分を求めてきたのか振り返ってみると、やはり朧も同じ不安に駆られていると知って、少し安心した。


「お前に忘れられてもまた惚れてもらえるように努力する。だから何度忘れられたっていい」


「本当に…?他の女に色目を使ったら八つ裂きにするんだから」


快楽に上がりそうになる声を何とか押し殺そうとしている朧の指に指を絡めて、強く誓った。


「明日ここを発ってからまたここに戻って来るまで、俺がずっと傍から離れない。望のことも心配すんな。ま、泣かれるかもしんねえけど、俺だって嫉妬や独占欲はあるんだからな」


望と距離を置かなければ、自分は死んでしまう。

それはとても怖くて想像できない恐怖に直面した朧は、考えに考えて氷雨に全てを委ねることにした。


「私を…望を救って下さい」


「ん、任された。だから俺に専念して下さい」


ふふ、と笑い声が漏れた。

全てを委ねて、氷雨の首に腕を絡めて唇を求めた。