「近永ー!!」



あぁ、まただ。



山田のバカが、叫んだ。



「近永、反応しろよー」



「……」



陸上部のバカが、100メートルほどの距離を全力で走ってこちらにやってきた。



隣に立って、平然と話してくる。



「……うるさいんだけど」



素っ気なく返すのは、このあとにやってくるであろう言葉を防ぐため。



「ははは、声の大きさだけが取り柄だからさ」



そう言った彼は、少し頭をかいた。悲しんでいるときの癖だ。



そんな顔をさせたかったわけじゃないのに。



「……ごめん、」



謝ろうとしても、山田は私の口を塞ぐ。大きな手が、私の唇にふれた。



「うわっ、キスマークつく!?」



「つかないわ、バカ」



大袈裟に飛び上がった山田。山田のバカ。バカ。



「ビシバシ言ってくれる近永も、好きだよ」



言われて、苦しくなった。



「23回目の告白です」