頷く。

そうだ、私、何を迷っていたんだろう。



見上げた空、ちかちかと瞬きを繰り返す星々。

その光景に、あの夏の日を思い出した。




『近づいても、いいですか』




思えば、あのときにはっきりと変わった気がする。



ぼやけていた“憧れの篠宮くん”の輪郭がはっきりして、“篠宮朝陽くん”という一人の男の子として、もっと。

もっと知りたい、近づきたいって思ったの。


近づきたい、ってずっと思っていた。



それは、この程度の甘やかな距離なんかじゃなくて、もっと、もっと、もっと。

内側まで、深く。




「……私」



やっと、思い出した。

今ならちゃんと、口にできる。




「どんな手を使っても、何をしてでも、篠宮くんをすくいたいって思う」




もう迷わない。

すくいたい、と思う気持ちは篠宮くんのためなんかじゃなくて、私のためかもしれない。



それでも、もう決めた。
私がそうしたいって思うから。



決めたなら、まっすぐ一直線に進むのみ。





「だから、教えて、篠宮くんのこと、ぜんぶ」





怖かったんだ、たぶん。



篠宮くんが明かそうとしない場所に踏み込むことで、篠宮くんに嫌われてしまうかもしれないって、どこかでブレーキをかけていた。

それは、恋をすることで知った弱さ。