「そう?」



みなみちゃんは、きょとんとした表情を浮かべて、ふりふり顔を左右に動かす。

その拍子にポニーテールが揺れて、それによって小さな風がふわっと生まれる。



「ほんとだ……!いい匂い!」



こもりんの言うとおり。
風に乗って鼻先に届いたのはすごくいい香りで。

すんすん、と思わず嗅ぐように息を吸う。



「えー、なんだろ?」

「ええとね、シャボン玉みたいな……」



柔らかくて、やさしくて、清潔感のある匂い。


ふわふわしていて、女の子って感じがする。

しばらく不思議そうにしていたみなみちゃんだけど、突然「ああ!」とひらめいたように目を見開いた。




「これかも」

「なるほどね、シーベリーズか」




シャカシャカと振りながらみなみちゃんが見せてくれたのは、液体の入ったオレンジ色のボトルだった。


こもりんが納得したように頷いている。



シーベリーズ、制汗剤のブランドだ。


制汗剤といえばこれ、といっていいほどの有名なメーカーのものなので、ほとんど皆同じブランドのものを使っていると思う。

私もそのひとりだよ。




「みなみのそれ、何の香り?」