プール掃除。
とっさに頭の中に浮かんだのは、広いプールにはびこった大量の藻。
う……っ。
想像するだけでも、面倒だ。
「いいな?」
「……。えっ、一人で、ですか?」
「そうだ」
即答したニッセンに息をのんだ。
この学校のプールって、結構広かった、はず。
「ちょっ、ちょっと待ってください……! 一人でなんて無理です!! っていうか、そもそも私が騒ぐ原因を作ったのは佐和くんなんだから! 佐和くんで良くないですか!?」
必死の形相で訴えるも、ニッセンはあっさりと首を横に振った。
「佐和はいつも俺の頼みを引き受けてくれてるからなあ。今回は久住で決まりだ」
「はあ!? そんなの理不尽……っ」
この前ニッセンが佐和くんに頼んだ仕事、手伝ったのは誰だと。
佐和くんなんて、全然真面目に仕事していないのに。
「久住。これ以上反抗すると、成績減点するぞー」
そんな、横暴な。
思わず言い返しそうになったけれど、さすがに成績の減点は堪える。
歯を食いしばって、頷いた。
……そうするしかなかった。
「……プール掃除、やらせてください……」
私の言葉にニッセンは満足気に頷いて、授業を再開した。
私はというと、涼しい顔で座っている佐和くんを思いっきり睨みつける。
そして、深いため息をついた。
「はあ……」
まだ五月は始まったばかりだというのに。
前途多難すぎる。
────それもこれも全部、隣の席の疫病神のせいだ。



