「あのとき?」
「……ほら、あの、屋上で」
言葉を濁して伝えると、麻美は「ああ!」と思い出したように手をぽんっと打って。
「花乃が私のシャツに思いっきり鼻水つけたときのことね!」
「わざわざ言わなくていい!その件は悪かったってば!」
麻美と私が仲良くなったきっかけは少し───というかかなり特殊なのだ。
あのときまで、私は麻美の存在を少しも知らなかったし、もちろん言葉を交わしたこともなかった。
だから、あのとき彼女が私に声をかけていなければ永遠に交わることなんてなかったと思う。
一年生が終わる、終業式の日。
────私がハルに振られたあの日の話。
「偶然だよねえ、あれは」
ぽつりと呟いて、麻美はあの日のことを振り返るように目を細めた。
「私が屋上に向かったのは、渡り廊下から見えたからだよ」
泣き腫らした顔で、
屋上の方へ駆けていく花乃が。



