「そういえば、花乃、知ってる?」

「なに……?」


「食堂の横の自販機に、新しくプリンシェイクが入ったんだよ」


「ほ、ほんとっ!?」




目を輝かせた私を見て、ハルが満足気に口角をあげた。




「ほんと。通りがかったときに見つけてさ」





絶対、花乃が好きなやつだから教えてあげようと思ったんだよね。




そう言って、優しく笑うハルに心が満たされていくのがわかる。


たとえば心をコップにたとえると、そうっと水が注がれていくイメージ。

潤って、たぷたぷになる感じだ。




「嬉しい」




思った通り言葉にした。

意識しなくても口角があがる。





ハルは、私のことを何でもわかっている。

それは自惚れなんかじゃない。




好きなことも、苦手なことも
癖も、気持ちも、考えていることも。


ハルにかかれば、お見通しなのだ。




「……私も」

「ん……?」

「……ううん、なんでもないよ」





────私も、ハルのこと
なんでもわかっているはずだった。