それから一呼吸置いて、
今度は私を真正面に捉える。
「────おまえさあ、」
「……?」
「早く、墜ちれば?」
佐和くんは、伏目がちに
でも、私を捕えて離さない。
そして、からかっているのか本気なのか、読めない表情と声色で。
「純情なんて捨てて、仁科なんて忘れればいいじゃん。 そうすれば俺が思う存分相手してやるよ」
もちろん合意の上で、ね?
なんて不敵に笑う。
────墜ちる?
佐和くんみたいに、ってこと?
そんなの。
「私は絶対、願い下げ!」
今度こそ佐和くんに背を向けて、昇降口へと駆け出した。
ハルが、待っている。
一度も振り返らなかったから、私は知らない。
そのとき佐和くんがどんな表情をしていたか───なんて。



