「手当て、さんきゅ。一応感謝しとく」
頭を触られたことも、
“一応” という単語も、気に入らない。
ちなみに頭を触られるのは本日二回目である。不本意ながら。
そんな私のご機嫌とりをするみたいに、佐和くんは「はい、これあげる」となにかを私に手渡してきた。
ミントグリーンのシャーペン。
「……あ」
ありがとう、と反射的に言いそうになって慌てて引っ込める。
そもそも、このシャーペンは私のもの。
それを佐和くんが勝手に人質にしていただけなんだから。
「あ……?」
私が零した一文字に佐和くんが不思議そうにしたから、とっさに取り繕う。
「あ、当たり前ってこと!」
「……ふ、なんだそれ」
私の返答に佐和くんがまた笑う。
爽やかキラースマイル。
幾度となくその笑顔に騙されてきたことを思い出す。
───もう二度と騙されない、簡単にときめいたりもしないと心に誓ったけれど。
でも、今回ばかりは。
今、私の目の前にある佐和くんの笑顔は、仮面なんかじゃない、本物に見えた。



