「面倒って思うなら、最初から校則違反なんてしなきゃいいのに」
「……」
私の言葉に佐和くんの反応はない。
はいはい無視ですか。
……別に、いいけれど。
消毒液を拭き終えて、絆創膏を取り出す。
ぺたり、くるん。
人の手当てなんて、する機会はなかなかないけれど、それにしては手際がいい方なんじゃないだろうか。
ちょっとした自己満足に浸りながら。
「できたよ」
そう告げると、佐和くんは応急処置が終わった自らの指をまじまじと見つめた。
かと思えば。
「……え、だっさ」
「はい?」
「なに、この柄」
貼ってあげたばかりの絆創膏を見て、ありえないとでも言いたげな表情。
「なにって……プリン柄だよ。可愛いでしょ?」
至極真面目な顔をして答えたのに、その瞬間佐和くんはぶはっ、と思い切り吹き出した。
そしてリミッターを外したかのように、盛大に爆笑すること十数秒。
「くくくっ……プリン柄って……」
イエロー地に総柄プリン。
絆創膏が巻かれた指を目の前に掲げながら笑う佐和くん。
そこまで笑われる理由がわからなくて呆然とする一方で、佐和くんってこんな笑い方もできるんだ、と少し驚いた。
屈託なく笑う佐和くんからは、
いつもの嫌味っぽさが綺麗さっぱり消えている。



