墜落的トキシック



意外にも素直に手を差し出した佐和くん。


その紅く染まった指先めがけて、思いっきり消毒液をかけてやった。



手加減も躊躇も一切ナシ。




「……っ」




視界の端で、染みる痛みにわずかに顔を歪める佐和くんを捉える。

ざまあみろ。



私からのささやかな仕返しである。




佐和くんが痛みを堪える姿をしばし堪能したあとで、ティッシュで消毒液を拭き取る。



すると、佐和くんが唐突に。




「……そういえば」

「……?」

「先生に言うなよ」




なんのこと? と首を傾げていると、佐和くんは、ため息をついて右耳をとん、と触った。





「ピアス。付けてんの見ただろ」


「別に、わざわざ言ったりしないよ」


「久住さんって、そういうのすぐ告げ口しそうだから」




イラッと来たけどとりあえずスルー。




「……ひとに口止めまでして品行方正を演じる必要ある?」


「なにかと都合いいんだよ。学級委員長やって真面目にしてるポーズとれば、自動的に成績が付いてくるし」




……それで、いつも

先生に対する言葉遣いも丁寧なんだ。




私がまんまと引っかかったすべての種は明かされたけれど、だからって納得はできない。