私の言葉に一瞬きょとんとした佐和くんは。
「…………ああ、」
忘れてた、なんて呟きながら胸元のポケットからミントグリーンのシャーペンを取り出す。
忘れてた、だと?
私が何のために佐和くんの手伝いを引き受けたと思ってるの、なんて心の中で毒づく。
「ん、」
差し出されたシャーペンを受け取ろうと手を伸ばして、
だけど空中で手が止まった。
赤。
佐和くんの指先の赤に目が留まって、息を呑む。
「血……」
目を見開いた私と対照的に、佐和くんは少しも気にしていない様子。
「怪我、してる」
佐和くんの指先をじわじわと侵食する暗赤色。
でも、ここに来たときは普通だった。
いつ……?
「……ああ、そういや割れてたフラスコでうっかり刺したっけ」
「……」
見たところ、傷自体はそんなに大きくない。
でも、結構深そうだし、なにより痛そう。
「こんなの放っとけば治る」
「っ!? 駄目だよ! バイ菌が入ったらどうするの!?」



