自分から聞いてきたくせに。
私としてはこれくらいじゃ全然言い足りないんだけどな。
まだまだ続くはずだった言葉の行き場がなくなって、持て余していると。
「久住さんは男に幻想抱きすぎ」
「……え?」
「久住さんが思っているような、聖人みたいな “爽やかくん” なんていないっつってんの。現実見れば?」
それに、と佐和くんは言葉を続ける。
「後半はともかく前半については、俺以外にも山ほどいるだろ。校則違反に女遊びとか、別に俺だけじゃねーんだけど」
俺ばっかり責められる意味がわかんねえ、と不満気な佐和くんを睨む。
「わかってるよっ! ……でも、佐和くんはどうしてもゆるせないって思ったの!」
私だって、
誰彼構わずにこんなに突っかかったりなんてしない。
────ただ、佐和くんは。
そこで黙り込んだ私に、佐和くんは少し考える素振りをしたあとで。
「…………ああ、仁科ね」
「っ!」
目を見開いた私に、
「おまえ、わかりやすいんだよ」と小さく零した。



