「特に理由とかない。久住さんって、面倒くさいしトロそうだし、一緒にいてもメリットとかなさそうだし」
「……」
今さらっと凄い勢いで人のことをディスったよね。
ピキっと頭の中で不穏な音がした。
……今は気のせいということにしておいてあげる。
「強いて言うなら気分? 普段ならもっと楽しーコトさせてくれそうな女選ぶけど、今日はそういう気分じゃなかっただけ」
だからってひとりで片付けするのも味気ないし、とどうでもよさそうな口調で付け加える。
そんな佐和くんに、また嫌いポイントが加算される。今回はプラス50ポイントくらい。
そうだ、
佐和くんって、そういう人だった。
すでに大嫌いなのに、
どんどん嫌いポイントが溜まって、これ以上嫌いになったら一体どうなるんだろう。
なんて考えていると。
「てか、久住さんって思った通りトロいね」
「……っ!?」
「そっちの棚、手伝うからさっさと片付けよ」
はい、これはそっち、と資料の束を手渡されるけれど。
こっちはそれどころではない。



