墜落的トキシック



「……なに」

「な、なんで……」




目を疑って、何度も瞬きを繰り返した。

佐和くんの背後。

たしか、つい先程までは実験器具がこれでもかってくらい散乱していたはずで───。





「もう終わったの……っ?!」




綺麗さっぱり片付いた棚を愕然と見つめながらそう言うと。




「当たり前」

「う、嘘。だってあんなに散らかって……」

「ばあか。これくらい秒で終わる」




顔色ひとつ変えない佐和くん。

対する私はあんぐりと口を開いて、相当なまぬけ面をしているだろう。




秒、ってそんなわけ……。

化学準備室に入ってきたとき、パッと見て資料よりも実験器具の方がずっと散らかっていた。


そろり、視線を上げる。

実験器具の棚は資料の棚よりずっと上の方まで連なっていて、私の身長じゃあ到底足りない位置にまで続いている。




「……」




私に資料整理をさせて、佐和くんが自ら実験器具の方を担当したのって。


器具の棚の整理の方がはるかに大変で危ない、から……?