侑吏くんが穴を開けているのは片方だけ。
余った片割れのピアスを見つめて。
「おまえも開ければ?」
「えっ、やだよ。絶対痛いもん!」
「んなの一瞬だろ」
「無理!それに体に穴が開くのってちょっと怖い、し」
「じゃー、その片割れどうすんだよ」
視線の先で、きらりと光る赤。
どうすんだよって聞かれても。
「考えてなかった……」
「俺は、おまえに持っててほしいんだけど」
「っ、」
ああもう、調子が狂う。
そんな甘えるような目で見ないでほしい。
望んでもないのにピアス開けようかな、なんて思っちゃうから。
なんて葛藤していると。
「いいこと思いついた」
つぶやいて、侑吏くんがしゅるりと自らのネクタイをほどいた。
そして今度は。
「っ!」
私の胸元に指を引っかけてネクタイをさらう。
あまりにも鮮やかな手つきに、されるがままで。
細長い指が、するりと首のまわりを通って、気づけばまた胸元にネクタイが結ばれていた。
「え?」
何したの、って疑問に思ったのは一瞬。
ネクタイはただ戻ってきたわけじゃない。
入れ替わっている。私と、侑吏くんのが。
「んで、ここにこれ付けといて」
私のネクタイの結び目のところに、侑吏くんが付けたのは余っていたピアス。
「……先生に怒られるよ」
「そこは上手くかわせよ」
「そのときは侑吏くんのせいにする」
「おまえなあ、」
可愛げのない言葉ばっかりこぼれ落ちていく、けれど。



