底意地の悪い佐和くんのことだから、もう少しなにか嫌味っぽいことを言ってくるかな、とか。
それか、さらなる弱みを握られるんじゃないか、なんて身構えていたから。
特に何事もなく作業をはじめた佐和くんはなんだか物足りないような気がする。
─────いや、これでいいのだ。
何事もなくさっさと終えて、シャーペンさえ返してもらえれば、それで。
「……よしっ」
囁くほどの声で気合いを入れて、棚に半ば無理やり押し込まれている明らかに不規則な資料に向き合う。
しばらく黙々と資料の整理をしていると、だんだんと要領を得てテンポが良くなってくる。
そんなに難しい作業ではない。
むしろ、わざわざ生徒に頼まなくてもニッセンが自分でやればいいのに……なんて思ってしまう。
っていうか、そもそもニッセンが散らかしたのが発端なんだから、自分で責任もって片付けるべきでしょ。
そうしていてくれれば、こんなところで佐和くんとふたりきりでいる必要なんてなかったのに、と恨めしく思いながら手を動かしていると。



