「……何ですか」

「ちょっとこれを職員室まで持って行ってほしいんだけど」




渡されたプリントの束。
また雑用、とげんなりしたものの。

まあそれくらいなら、と承諾することに。



そして、足早にニッセンのおつかいを終えて、職員室を出ると。




「……うっ」




ざざあ、と雨の音。
思わず顔をしかめる。


窓の外を見ると、結構な本降り。
……なんというタイミングで。



昇降口に向かいながら、うう、とうなる。



今日に限ってニッセンに頼まれごとをするし、雨も降ってくるし。
そわそわしていたせいであまり覚えていないけれど、星座占いの順位も下の方だったような。



まるで神様に『やめておきなさい』って言われているみたいだ。
ここにきて、迷いがうまれる。



やめておこうかなあ、やっぱり今更かなあ、と弱い心が顔を出した、けれど。





「……ううん」




ぱち、と両手で頬を叩いた。
気合いを入れるためだ。



今日と決めたら今日。
言うと決めたなら言うまでだ。


侑吏くんはきっともう学校を出ているけれど、今なら探せばまだ間に合う。


追いうちのように、傘を持ってくるのを忘れたことに気づいたけれど。



もういい、いいんだ。なんだって。




傘を差さないまま、勢いよく外へ飛び出した。