「そう？遅かれ早かれそうなるとは思ってたけどねえ」
「私は思ってなかったよ……全然」
想像すらできなかった。
大嫌いだった。
最初は顔も見たくないとまで思っていたほどだ。
この人をまさか、好きになるなんて思ってもみなかった。
「で、花乃はどうするの？」
「どうするって言われても……」
どうもこうもあるかって感じだよ。
自分の方から丁重にお断りしておきながら、今更好きだと気づきました、なんて虫のよすぎる話だ。
引け目、というか後ろめたさを感じているのは事実。
「ふーん。ぶっちゃけちゃえばいいのにー」
「ぶっ……！？」
話が突飛な方へ進んで、思わず目を見開いた。
何を言いだすかと思えば。
「恋愛ってのは当たって砕けるもんでしょ」
「砕ける前提じゃん、それ」
「でも、うじうじしてたって始まらないんだから。当たって砕けて次よ次」
あけすけな物言いに苦笑する。
と、同時に麻美が言うと説得力が出てくるから不思議だ、とも思う。
「いーのよ。あんたまだ若いんだし」
「若いんだしって、麻美は何歳なの……」
突っ込む私に麻美はけらけらと笑う。
その軽快な笑い声に呆れつつ、背中をとんと押された気がして、無意識に背筋が伸びた。
