墜落的トキシック

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「あ、久住さん。来たんだ?」



放課後。

化学準備室に向かえば、佐和くんは既に壁にもたれかかって待っていた。



来たんだ、って、なにそれ。
まるで来ない前提みたいな言い方をするけれど。




「来いって言ったのは佐和くんじゃん……」


「来いとは一言も言ってない。あくまでも任意だけど?」




う、と言葉に詰まる。

たしかに “手伝う” と最終的に言ったのは私だ。



……でも、そう言わせたのは誰なの。




「つーか、久住さんなかなか来ないから、てっきり帰ったかと」




時計をちらりと一瞥して、そう言った佐和くんに顔をしかめた。



仕方ないじゃん。




化学準備室なんて今まで来たことがなかったんだもん。


でも、迷子になっていた、なんて知られたらそれこそ馬鹿にされそうだからここは大人しくしておく。




「じゃあ、俺こっちの実験器具のほう片付けるから。久住さんは資料の棚の整理、よろしく」




業務連絡のように簡潔に述べて、散らかった実験器具の整理に取りかかりはじめた佐和くんに呆気にとられた。



……なんだ、それだけ?


ほっと安堵すると同時に、少し拍子抜けする。