だけど、まださっき感じた恐怖心から立ち直れない。
黙ったままの私にハルは。



「最低だって思った? 幻滅した? ……俺のこと嫌いになった?」



質問の形をしている。
だけど、声色が、まるで願うようだ。


最低だって思ってほしい。
幻滅してほしい。

嫌いになって、ほしい、の?




どくん、と心臓が揺れる。
戸惑って、動揺のあまり唾をのみ込んだ。





「最低だって、大嫌いだって花乃に言われたら俺だってさすがに、」




待って。
何、言ってるの……?

そんなの。




「そんなの無理だよっ。最低だとか大嫌いだとか思うわけないじゃん……!」




怖いと思った。
でも、でも、だからって。

そんなことで嫌いになれるわけがない。


だって。




「ハルは昔から、ずっと今も、私の一番大切な人だもん……」





一番だ。
二番も三番もない。


一番、心の底から、大事で大切でかけがえがなくて。


……でも。




「一番大切な人、だけど……」




口ごもる。
だけど、その先を口にする勇気が出なくてうつむいた。


そんな私にハルはちょっと口角を上げる。
思いのほか、優しい表情で。




「花乃、俺、花乃のことが好きだよ。……本当に」

「……うん」

「でもさ、花乃は俺のこと、好きじゃないよね」

「っ!」



私が言うよりも先にハルが口にした。


答え、だ。


私から、ハルに向けての、答え。