完全に面白がっているであろう麻美をぴしゃりと否定する。
ありえない。
たらればだとしてもありえない。
「ええ、もったいないなあ。顔面国宝だし、頭も良いし、優良物件なのにー」
恋、しちゃえば? なんてなにかのCMか広告のキャッチコピーみたいな言い回しで、麻美は言うけれど。
私にその気は一切ない。
「しない! 佐和くんには絶対に、恋なんかしない……!!」
「そう?それは残念」
かたくなに首を横に振る私に、麻美はそう答えた。
その口調は全然残念そうではなくて、麻美も大概な性格をしているなあ、なんて思う。
「ところで仁科くんとは最近どう?」
佐和くんの話で体力を消耗した私を気遣ってか、はたまたそうでないのか。
話題を変えた麻美に、私は小さく息をついた。
「……どうもないかな」
「そっかあ、そうよねー」
あえて淡白な相槌を入れてくれたであろう友人に感謝しながら。
……自重しようと思うのに、皮肉めいた本音がほろりと零れ落ちた。
「私とハルは、良き幼なじみだよ」
「……」
「──────残念ながら」



