わからない。ハルが何を考えているか、全然わからない。
だけど、有無を言わせない表情に、黙って従うしかなかった。
────ガチャ
ある部屋の前で突然立ち止まって。
ハルがルームキーで鍵を開ける。
……ということは、ここ、ハルが泊まる部屋ってことだ。
「入って」
「え……?」
「いいから」
中に入るようにうながすハル。
でも。
「他のひとが、」
「いないよ。みんなまだ風呂だから」
しばらく誰も来ない。
そう断言されて、息をのんだ。
異性と部屋を行き来しないこと。
そんな先生の忠告が一瞬頭の中をちらついたけれど、それを頭の片隅に押しやる。
「お、お邪魔します……」
誰に、というわけでもないけれどそう告げた。
他人の泊まる部屋に忍び込むのはやっぱり気が引けて、おずおずと中に入る。
私に続いて部屋に入ったハルが後ろ手に扉を閉めて。
カチャ、と鍵のかかる音が聞こえたかと思えば。
「ひゃっ!?」
ふわっ、と前触れもなく浮遊感が体を包む。
文字通り “投げられた” のだと気づいたのは、背中にぼすっ、と柔らかな衝撃を感じてからだった。
背中から着地した先は、ベッドの上。
痛くもなんともないけれど、ただ、投げられたという事実に目を見開く。
慌てて起き上がろうとするけれど、その前に。
仰向けに倒れ込んだ私の上にハルが覆い被さった。
後ろにはベッド、前にはハル。
これじゃあ、身動きがとれない。



