頷きつつ、はっと気づいた。
私、笑えている。



ハルと別れて、空っぽになったと思っていた。
もう私には何にも残らないんだと。



別れたのを認めることすら嫌だった……のに。
今、全然大丈夫だ。どこも、痛くない。




「でもさ、仁科くんの次ってなるとハードル高いよね。あのイケメンに次ぐってなると……佐和?」

「佐和、ほんっとかっこいいもんね。頭もいいしかなりの優良物件」




ほう……とうっとり顔で言うふたり。
麻美もそれに同調して頷いている。


侑吏くんがかっこいいのは知ってるもん。
頭がいいのも、知ってる。勉強教えてもらったし。


だけど侑吏くんにはもっと他に……って、変なの。


むくむくと湧き上がる変な対抗心。
侑吏くんが褒められようがどう思われようが、関係ないのに。


なぜか、心の中にもやっと暗雲が立ちこめて、それに自分で戸惑った。




「まあでも、あいつはないわー」

「同感。佐和は女グセ悪い……っていうか、女を駒としか思ってなさそう」

「最近はあんま聞かないけど、前まで酷かったもんねー。それで、関係もっても彼女にはなれないんだから地獄よあんなの」

「顔がいいから、ぎりぎり許されてるだけだね。行動は完全にアウトでしょ」



げんなりした顔で非難する、そんな彼女たちに。

なぜだか、ほっとしてしまって。

よかった、なんて思ってしまって。