「……あ」


思わず漏れる声。
その直後、麻美が声を上げた。



「あ、あれ佐和くんたちの班じゃなーい?」



佐和くん。
麻美の口から出た名前に指先がかすかに揺れた。


京都市内での自由行動、とはいえ、実際歩いてみるとその範囲は結構広い。
それぞれの班が思い思いに動いているから、鉢合わせることもなくて。


まさか、ここで見かけるとは思っていなかった。


そして何より驚いたのは、私がすぐに侑吏くんだと見抜いたということだった。
遠目で、しかも横顔。


4、5人で構成されている班。
みんなクラスメイトで顔見知りなわけで、でもその中でも侑吏くんだけがくっきりと見えたような気がした。



「ふーん、琴葉と同じ班なんだねえ」



麻美の何気ない呟きにはっとして、よく見ると確かに。
侑吏くんの一番近くで楽しそうに笑顔を浮かべているのは北村さんだった。


そういえば、侑吏くんと北村さんは同じ班だったな。
班分けのくじ引きをしたときに、喜んでいた北村さんの姿を思い出す。


そうだよね、北村さんは侑吏くんのことが好き……で。




「っ、」



ふいに視線の先で、北村さんが侑吏くんに腕を絡める。
侑吏くんはすぐさま嫌そうに振りほどいていたけれど、この距離からだと照れ隠しの仕草に見えなくもない。


心臓をぎゅっと絞られたような心地がして、無意識にスカートの裾を握りしめた。