大丈夫。
私、ちゃんと、ここにいる。


ハルがいる。
ハルは、わかってくれる。


ハルだけが、私を、私たらしめてくれる。



だから、お願い。
お願い、ずっと、ずっと。



『……いなくならないで』




かすれた声で呟いた私を、ハルはぎゅっと抱きしめた。
いなくならないよ、と答えるように、強く。



それでも、私は信じられなかった。
何も信頼できない。



だって、普通も当たり前も簡単に崩れ落ちてしまう。
ひとはこんなにも簡単に孤独になる。




『もう……やだ……』




首を横に振って泣きじゃくる私をしばらく抱きしめていたハルは。
しばらくして、体を離して。


そして、そっと囁いたんだ。




『花乃。付き合おっか』




花乃、と呼び捨てにされたのはこのときが初めてだった。




『付き合う……?』

『俺は、花乃が好きだよ』



病室の前。
あんなに告白にふさわしくないシチュエーションは後にも先にもないだろうと思う。


私の涙の跡をそっと指でなぞったハル。
私は、こくりと首を縦に動かした。



『私も、ハルくんが……好き』



好きだと思った。
この人しかいない、と思った。

手放したくないと思った。