『ハルくん!』
私しか、いないと思った。
誰も彼もから見放された彼のことを、わかってあげられるのは私しかいないと。
ハルに手を差し伸べてあげられるのは、私だけだ、と。
『だいじょうぶ。私が、ハルくんを守るよ!』
『……え』
『私がハルくんをくるしめるもの、ぜんぶやっつける。ハルくんのためだったら、なんだってする!』
『ほ……んとうに?』
不安に揺れた手のひらをぎゅっとしっかり握った。
だって、ハルには私しかいない。
この手を離したら、ハルはいなくなってしまう。
『毎日ハルくんにおかえりって言うよ、それからただいまって言う!それで、ハルくんも私におかえりって言って、ただいまって言うの。一緒にごはんを食べて、楽しいはなしも悲しいはなしもはんぶんにして、一緒に寝るんだよ!────ずっと、ずっと、一緒にいるの』
『一緒に……?』
『うん!約束だよ!』
一つ目の約束。
私はハルをそばで守り続けると誓った。
ハルは、血と雨がだめになった。
見ると、思い出すんだという。
だから、傍にいた。
なるべく一緒にごはんを食べて、不安で眠れない夜は一緒に越えた。
間違ってもハルが消えてしまわないように。
そして、そのうち母さんがハルのお母さんの代わりをするようになった。
家こそは別々だったけれど、まるで家族のように一緒に育った。
何年もそうしているうちに、今度はそれが私たちの “普通” になった。
そうして、4年の月日が流れて。
二度目の約束を交わした、中学二年生の夏がやってくる。



