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きっと、私がいなければハルは、ハルがいなければ私は、とうの昔に朽ち果てていただろう。



────これから語るのは私とハルの “約束” の話だ。

私はハルと人生で二回、“約束” を交わした。



一度目は、小学四年生のとき。
もう7年も前のことだ。



私とハルは物心ついた頃から仲が良かった。
いわゆる、幼なじみ、というやつだ。



理由は単純。
家が向かい同士だったから。ただ、それだけ。



『花乃ちゃん!』

『ハルくん、遊びましょーっ』



きっかけは何だったのだろう。

ただ、ずっと、ずうっと仲が良かったから、家族同士も自然と距離が近くなった。




そのうち私の家とハルの家は全然違うのだということを知ったのだ。




私の家族────久住家は仲が良かったの。
父さんは母さんが大好きだったし、母さんも父さんのことが大好きだった。


たぶん、父さんはずっと母さんに恋をしていたのだと思う。
結婚してからも、ずっと。

私もそんな母さんと父さんが大好きだった。


それが、家族の普通、だと思っていた。




だけど、ハルの家は全然違った。
気づいたときには、ハルの家族はめちゃくちゃだった。


ハルのお母さんはハルのお父さんが大嫌いだったし、その逆もしかり。
仲が悪かったふたりの口論は向かいの家からよく聞こえてきた。


だけど、それでもハルはハルの両親が好きで、大切にしていたと思う。
それが、ハルの家の普通、だった。