「……手伝う、から」
本当なら丁重にお断りしたいところだけど。
そうできないことまでわかった上で、この男がこの話を持ちかけてきているのもわかっているけれど。
「ちゃんと返してくれるん……だよね?」
「そういう約束だから、そりゃあね」
「……それならいい」
大人しく頷いた私に、佐和くんは少し面白くなさそうな顔をした。
……のは一瞬だけで。
「じゃあ、放課後。化学準備室で」
「……っ」
「────あ、遠藤さん。ごめんね?うるさくして」
完全無欠の爽やかキラースマイルを置き土産に偽爽やかイケメンは去って行った。
そういえば麻美の苗字は遠藤だったなあ、なんてぼんやり思うのとは別の思考回路で。
「……っ、あ、頭触りやがった……!」
去り際にぽん、と何の気なしに頭をひと撫でした佐和くんにムキーッと怒りのボルテージが昇っていく。
弱みを握られた、というか
ただ馬鹿にされたような……子供扱いされたような気がして、余計にムッときた。
誰かのことをここまで嫌いだって感じたこと、ないかもしれない。
心底嫌いだ。
嫌いも嫌い、大嫌い。



