「……あのさ」


そっと、侑吏くんが。
私の弱いところを柔く撫でるみたいに、言葉を紡ぐ。




「花乃が、雨と保健室────病院が苦手なのってなんで?」

「……っ」



また、うつむきかけた私の顎を侑吏くんが掴んだ。
そして、侑吏くんの方へ、向ける。

目がそらせなくなる。



「なあ、花乃と仁科って……何なわけ?」




目と目が合って、わかった。
この人は、侑吏くんは、興味本位で聞いているんじゃない。


懇願するような声に、揺らいだ。




「……侑吏、くん」




私とハルの話。

大切で、だけどきっと、私たち以外には些末な物語。


それを知っているのは、分かち合うのは、ハルだけでいいと思っていた。


ハル以外、どうでもいい。
どうでもよかった。



なのに、なんで。




「……長くなるけど、いいの?」




熱に浮かされていたから、だろうか。

知ってほしいと思った。
わかってほしい、と思ってしまった。


知りたいと言ってくれるのなら、差し出したいと思ったの。


他の誰でもなく────侑吏くんに。





「あのね、」