ごまかすのが下手だなあ、と思いながらプリンの蓋を開ける。

ふわっと甘い香りが漂って、さっきまで私の不快感を作り出していた保健室の空気がそこまで気にならなくなる。



せっかくだから、食べるよ。

最近は食欲もめっきり落ちていたけれど、プリンなら食べられるもん。



ぱくり、と一口含んで頬を緩めた私を見て侑吏くんが口を開いた。




「悪かった」

「え……?」



急に謝られても、何のことかわからない。
きょとんとした私に侑吏くんは言葉を重ねる。




「嫌がってたのに、保健室に連れ込んで」




保健室に連れ込んで、って侑吏くんが言うと卑猥に聞こえるな。
なんて頭の片隅で考えつつ、首を横に振る。

侑吏くんに悪気がなかったことは百も承知だ。



「……おまえ、本当に保健室苦手なんだな」

「……」

「さっきから、ずっと怯えた顔してる」



思わず、うつむいた。
そしてぽつりと呟く。



「わかってたくせに、連れてくるなんてひどい」



八つ当たりだよ。

でも。侑吏くんは知っていたくせに、とも思ってしまったから。



「だからって一生病院に行かずになんて、生きていけねーだろ」

「……わかってる、よ」



そんなこと。

その通りだ。私はいったいいつまで。
いつまで縛られたままなのだろう。