墜落的トキシック



カーテンに囲われた、白いベッド。
どくん、と心臓が嫌な音を立てた。

見ていられなくて目を逸らす。


そんな私の仕草には気づかないまま、侑吏くんは私の体をそこへそっと横たえた。


保健室は相変わらず苦手。


だけど、よほど体調が悪かったらしく、横になった瞬間、体が楽になった。
全身で感じる不快感とは別に、まぶたが勝手に落ちていく。



「しばらく、そこで寝とけ」



そう言い残した侑吏くんが、背中を向けてカーテンの向こうへ出て行こうとする後ろ姿がかすかに見えて。



「待って、侑吏くん……っ」



思わず名前を呼んで引き留めた。
侑吏くんが驚いたように振り返る。




「お願い……ひとりに、しないで」



ぽつり、と呟いたその声は、思っていたよりも随分弱々しくて。

じわりと生理的に滲んだ涙の向こう、侑吏くんの喉がごくん、と動くのが見えた。


ぼんやりとする思考回路の中、無意識に片腕が侑吏くんの方へ伸びる。
後から思えば、きっと、これは私なりの甘え、だったんだと思う。


はっと目を見開いた侑吏くんが、立ち去ろうとした足をこちらに向けて戻ってきて。
ベットの近くの椅子に腰を下ろした。


そして、差し出した私の手を彼の手でそっと包んでくれる。

ひんやりしていて、気持ち良くて。それから、ほっとした。



安心してまぶたを再度下ろした私の耳に届いたのは。



「……傍にいるから。安心しろ」



私が眠りに落ちるまで、繋いだ手は離れないままだった。