「っ!」
びくん、と体が反応した。
体調不良とは関係ない冷や汗が背中に伝う。
「待って、保健室は」
嫌だ。
侑吏くんも、知っているはずだ。
「は? おまえ、死にたいの?」
「大丈夫だから、ほんとうに!」
「何言ってんだよ、ぶっ倒れておきながら」
「嫌なの!」
じたばたと手足を動かす私を侑吏くんはジト目で見下ろす。
何でそのアングルでもイケメンなんだよ、くそやろう、とちょっといじけた。
「暴れんな、落とすぞ」
そう言った侑吏くんの目が本気と書いてマジと読む、くらいマジだったから。
大人しく手足での抵抗は諦めた。
だけど。
「本当に、嫌なんだってば……」
「んなこと言ってられっか。我慢しろ」
子供じゃあるまいし、と睨まれた。
非情すぎる、と眉を寄せたタイミングで。
────ガラガラッ
豪快な音を立てて、侑吏くんが保健室の扉を開けた。
つん、と消毒液の匂いがして、鳥肌が立つ。
「誰もいねーな」
どうやら保健医の先生は留守にしているようだ。
侑吏くんは私を抱えたまま、ベッドの方へ向かった。



