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放課後。

学校からの帰り道、隣にはもちろんハル。
ハルの様子はやっぱりいつもと何ら変わりなくて。



「……はあ」

「今日、ため息すごいね。大丈夫?」



無意識に零れてしまうため息は、もう本日何度目だろうか。
浮かない様子の私をハルが心配そうにのぞき込んだ。



「や、大丈夫、だけど……」

「ほんと?」



朝からずっとこんな調子だ。
ぐるぐると頭の中を回り続けている。



『何とも思ってない奴にそんなこと誰がするかよ』



侑吏くんの台詞。
思い出すと同時に、ハルにつけられた痕に意識が集中する。

痛みもかゆみもない。
ただ、そこに散った花が頭の中に浮かぶのだ。


無論、今は絆創膏で覆われていて見えないけれど。

あのあと、ちゃんと、隠した。
……侑吏くんがすごむから、従ったまでだ。



『何とも思ってない奴に』



侑吏くんの理屈でいくとハルは────


ちらり、と横目でハルを見上げると、彼はいたって涼しい顔をしていた。


ないない。やっぱり絶対ない。
ハルが、私のこと……なんて。

そんな都合のいい話はない。