ごくん、と唾と同時に空気を飲み込んだ私を侑吏くんは冷たく見据えて。



「もうおまえさ、さっさと仁科と付き合えよ」

「無理だよ!だって、ハルは……っ」



無理だからこうなってるんじゃん。
ハルは、私のことなんて何とも思っていないんだから。




「何とも思ってない奴にそんなこと誰がするかよ!」




声を荒げた侑吏くんに、息が止まった。
鋭く見つめられて、体が固まる。


侑吏くんは、私に、ハルと付き合えって言っているんだ。
そのことを頭で理解して、なぜか喉の奥がひりひりする。



何も言えずにいる私を、苦しげに見つめて侑吏くんは。




「もういい」



そう言って、くるりと背中を向けた。
そしてこちらは振り向かないまま。




「とりあえず、それ隠しとけ」

「……?」

「あのクソダサい絆創膏でも貼ってろ、見せつけんじゃねーっつってんの」




ああ、キスマークのことか、と理解した時には侑吏くんはもうその場にはいなかった。
どうやら先に教室に帰ってしまったらしい。

一人取り残された私は、しばらくその場に呆然と立ち尽くしていた。