「しょ、ゆういん?」

「キスマーク。どうせ仁科なんだろ」



キスマーク。
侑吏くんが発したワードにはっとする。

慌てて首元を手で覆った。



「おまえ、まさか気づいてなかったわけ?」

「っ!」

「三箇所もつけられて?」




これじゃ、まるで誘導尋問だ。
う、と言葉に詰まる。


気づいてなかった、には語弊がある。
昨日、ハルがそこに触れた感触は鮮明に覚えている。
赤く咲いた花にも気づいていた。


だけど、それがそういう……“キスマーク”だとは思わなかったのだ。


だって、あのあとのハルはいつも通り何でもないって顔をしていたもの。




「で、おまえは大人しく触られたの?」

「え……」

「頭おかしいんじゃねーの」

「っ、そんな言い方!」



侑吏くんの非難めいた口ぶりに思わず首を横に振った。



「普通、抵抗すんだろ」



そんな簡単に言わないでよ。
唇をぎゅっと噛み締めた。



「……だって、ハルは意味なくあんなこと、しないもん」

「へえ。その状態でまだあいつの心配するんだ?」



いつもの数倍トゲトゲしい口調に、驚いて目を見開く。
侑吏くんがここまで皮肉めいた言い方をするのは初めて聞いた気がする。