「そう。それで、ケーキを準備したいんだけど……」
いかんせん私は流行りにうとい。
だから、どこのケーキが美味しいとか、よくわからなくて結局いつもと同じになってしまうのだ。
だから、今回は麻美を頼ろうと思って。
麻美はそういうのに詳しそうだと思ったから。
「それなら、駅ビルに入ってるパティスリーのがおすすめ」
「助かる、ありがとう」
麻美に教えてもらった店の名前をささっとメモする。
今日中に一応予約を入れておこうかな。その方が確実だもんね。
「最近は仁科くんとはどう?」
「うーん。別に何もない、かな」
麻美の問いにそう答えて、ハルの様子を思い返す。
「あ……でも」
「でも?」
「ちょっと違和感っていうか、変、かも」
ハルの様子が、だ。
でも、変、と言ってもどこがどんな風にかははっきりとはわからない。
少し引っかかるくらいの話。
「ふうん」
興味なさげに相槌を打ったかと思えば、にやりと口角を上げる。
「まー、存分に楽しませてもらうわ」
「は……?」
「面白いことになりそうねー」
意味深に笑う麻美の真意が読めず、眉をひそめるけれど。
「ふふ、こっちの話」
「どういうこと……?」
「さあね」
結局のところ彼女は曖昧に濁すばかりだった。



