「はあ?」
呆れたように肩をすくめた佐和くんは、私の目の前になにかを突きつける。
「俺は、それ、わざわざ返しに来てやっただけ」
「っ、わ、私のシャーペン!!」
彼がちらつかせたのは、あろうことか私のシャーペンだった。
ミントグリーンの一番お気に入りのもの。
「返してよっ!」
「何その言い方。それ、昨日勝手に教室に放り出して帰ったのはおまえだろ。残りの日直の仕事、誰がやってあげたと思ってる?」
“おまえ” って言った。
嫌いポイントがまた加算される。
女の子のことを “おまえ” って呼ぶ人、大嫌い。
「……それは、悪かったと、思ってるよ」
嘘。
1ミリも悪かったなんて思ってないけれど、そうでもしないとシャーペンが返ってこない気がして。
「それだけ?」
意地悪く口角をあげて首を傾げる佐和くんに、ピキっとなにかが切れそうになる。
必死に堪えて、口をもごもご動かした。
「……アリガトウゴザイマシタ」



