「ふぃいから、ふぁにゃふぇ!!」
いいから離せ、と語調を荒げ。
キッと鋭く睨むと、ようやく解放された。
佐和くんは私を蔑むように見下ろしながら、口を開く。
「大嫌いだの裏切りだの詐欺だの? 散々言ってくれるけど、悪口はいけませんって教わらなかったわけ?」
意地悪く嘲笑われるけれど、そんなので怯むわけがない。
「それはこっちの台詞! 校則違反はいけませんって習わなかったの!?」
昨日見つけた黒いピアス。
髪の毛に隠れて今はちょうど見えない、その位置を指差す。
改めて佐和くんに向き合って、ああ、今日はネクタイは普通なんだ、なんて思う。
だいたい、私が佐和くんにいろいろ言われる筋合いなんてないはず。
校則違反はルール違反。
保健室でいかがわしいことをするのも、公序良俗に反しているからルール違反。
先にルール違反を犯したのは、佐和くんの方なのに。
っていうか。
「盗み聞きするのが悪いんだよっ」
そもそも私は麻美と話していただけ。
それを勝手に聞いておいて、私を責めるなんてちゃんちゃらおかしい。



