「どう?美味しい?」
「うん。……甘いね」
目を細めて、それからハルはまたコーヒーを飲む。
カップからはまだ湯気がしっかりと立ち上っている。
そこで、なぜか侑吏くんの姿が頭の中にちらついた。
昨日、熱々のたこ焼きを拒否した侑吏くん。
あの侑吏くんが猫舌って、ちょっと面白い。
「……ふふ」
思い出し笑いを零すと、ハルが不思議そうに首を傾げた。
「花乃?」
「あ……ううん、何でもないよ」
「……そう」
そういえば、昨日。
侑吏くんのこと、放って帰ってしまった。
強引に誘われたとはいえ、申し訳ないことをしたな。
つきん、と少し胸が痛む。
「花乃」
「っ、ハル」
名前を呼ばれて顔を上げると、ハルの視線は真っ直ぐにこちらに向けられていた。
「心ここにあらずって感じだけど。大丈夫?」
「えっ? うん、大丈夫だよ」
全然大丈夫。侑吏くんのことを少し考えていただけ。
ハルが心配することなんて何もない、と首を振って否定するのとはうらはらに。
うらはらに、心配そうに眉を寄せるハルのその表情に、私は。
私の心は、満たされる。
安心する。こんなにも。
「花乃」
ハルがまた、私の名前を呼ぶ。
そのトーンに切実さを感じて、きょとんとした。
「……?」
「……俺は────」
ハルが何か言いかけて、つぐむ。
何だろう、と首を傾げたものの。
その先が紡がれることは、結局なかった。
“俺は、花乃が思うような人間じゃないよ”



