「え、」



驚いて目を見開いていると、侑吏くんが私にぽん、とぬいぐるみを寄越す。



「やるよ、それ」

「っ、ほんとに取れたのっ?」

「あーいうのはコツがあんだよ」



にやり、と口角をあげた侑吏くんに唖然とする。絶対取れないと思っていたのに。

取れない前提で、揚げ足を取ってやろうかと考えていたくらいだ。



だけど。



「可愛い……!」



ぎゅう、と胸の前でぬいぐるみを抱きしめる。
この子の可愛さを前には何もかもどうでもよくなる。


ええ、本当にもらっちゃっていいのかな。




「へへ、ありがとう、侑吏くん」




へらり、と思わず笑みが溢れる。
ぬいぐるみをむぎゅむぎゅしながら嬉しさに浸っていると。



「案外ちょろいんだな」

「……?」



私の緩みきった頬を侑吏くんの指先が、つん、と突いた。



「花乃って仁科以外にもそういう顔すんのなってこと」



侑吏くんの言っていることはよくわからない。

だけど、“仁科” の名前にぴくりと体が過剰に反応した。




そういえば、今日、ハルのこと。
ぞくり、と背中を悪寒のような何かが走る。