「一回で」
「あいよー、200円」
侑吏くんが屋台のおじさんに小銭を渡す。
それと引き換えにコルク銃を受け取った、ということは。
「ちょっと侑吏くん!取る気なのっ?」
「……」
「無理だよ、だって結構大きいし。こんなとこで見栄張らなくても……」
プリンのぬいぐるみは近くで見ると、さらに可愛かった。
けれど、射的で狙うには大きすぎる。
ましてや一回でなんて。
「うるせー気が散る、黙って見てろ」
軽く睨まれて、仕方なく口を閉ざした。
だって、なんか悪いじゃん。私が物欲しそうに見ていたせいで侑吏くんの200円がパーになるのは、ちょっと。
そんな私をよそに、侑吏くんはコルク銃をすっと構えて。
狙いを定めるように少し目を細めた。
そして侑吏くんの指が動いて。
────パンッ
小気味のいい音が響く。
反射的に目をつむってしまったせいで、よく見えなくて。
だけど。
すぐにカランカランッと派手なベルが鳴り響いた。
「いやー、兄ちゃん上手いねー!」
屋台のおじさんが相好を崩しながら侑吏くんに手渡したのは、黄色いぬいぐるみだった。
あの、プリンの。



