「俺の好きなようにしたら、悪いか」
「え?……悪くは、ないと思うけど」
北村さんとじゃ嫌だった、ってこと?
贅沢だなあ、なんて思っていると。
「ならいいだろ」
「よくはないよ! 主に私が!」
侑吏くんが女の子の誘いを断るのは自由だ。
だけど、それなら私にだって拒否権が欲しい。
恨めしく思いつつ、睨むと。
「じゃあ、どこが良かったんだよ」
「……え?」
「祭り以外で」
え?
何言ってるの、侑吏くん。
今、そんな話してない。
まるで私と出かけるのが大前提、みたいな。
面食らったまま何も言えずにいると。
「何もないなら、大人しく付き合え」
「……何それ……」
ほんと、意味わかんないよ。
だけど侑吏くんはそれ以上取り合ってくれなくて、仕方なく諦めることにした。
せっかくお祭りに来たんだし、楽しもう、と気持ちを切り替える。
「どこがいい?」
いつも自分勝手な侑吏くんが珍しく私に選択権をくれたから。
「そうだなあ、イカ焼きかたこ焼き。それか焼きそば!」
「さっそく食い気かよ。豚だな」
「だって今日は侑吏くんの奢りでしょ?」
「あ?誰がそんなこと……」
「忘れたとは言わせないけど、私は今日侑吏くんに付き合わされてるんだからね」
「……はいはいわかったよ」
侑吏くん相手だから、ソースも青のりも気にしなくていいもんね。
なんてこの後のプランを考えながら屋台を見て回る。
いつの間にか、繋いだままの手が気にならなくなっていた。



