悔しいけど格好いいんだよなあ、と思っていると。



「行くか」



その言葉と同時に、捕まえられた手。
ぎょっとして振り払おうとすると、ぎゅう、と力が強まった。



「ちょっ、侑吏くんっ」



どういうつもり、と声を荒げると。



「迷子防止」

「なっ、ならないよ!」



首を振って抵抗するも、結局離してはくれなかった。

私の手をすっぽり包み込む侑吏くんの手のひら。伝わってくる体温が、熱い。

こんなにも熱くて、暑いのは、夏だからだ。きっと。



そのまま腕を引かれて、屋台が立ち並ぶ方へ向かう。

むわっと立ち込める熱気、空腹を誘うソースの匂い、甘い匂い。それからぱちぱちと何かが焼ける音。お祭り特有の喧騒。



そして、それより何より気になったのは、視線。周りの視線だ。


侑吏くんといるとやけに視線を感じる。
女の子たちの視線が肌にぐさぐさと刺さってくるもん。


……侑吏くんって本当にモテるんだなあ、とこんなところで実感した。



「ねえ侑吏くん」



繋がったままの手をちょいちょい、と引いた。



「何だよ」

「なんで北村さんのこと、断っちゃったの?」

「は?」

「だって、お祭り来たかったんでしょ」



北村さんだけじゃない、他の女の子たちもだ。
侑吏くんなら、お祭りに一緒に行ってくれる人になんて困らないはず。