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翌日、夕方5時。


「遅い」

「時間ぴったりだし!」



神社の鳥居の前で腕組みして立っている侑吏くん。あちこちに吊るされている提灯が、彼をほんのり赤く照らしていた。


駆け寄るなり、『遅い』と怒られたけれど、時間はジャスト17時。


それに、昨日のあのメッセージと電話で、私が来る前提になっているのがまずおかしいよね。


正直言うと侑吏くんが本気で来るとは思っていなかった。
半分くらいは冗談だと思っていたよ。


っていうか、あんなので誘ったつもりでいるなら、侑吏くんは人生を一から学び直したほうがいいと思う。



だけど、昨晩から散々迷った挙句来ることにしたんだ。
だって行かなかった方が後が怖い。何されるかわからないもん。



「浴衣じゃねーんだな」

「あたりまえだよ!」



私の頭のてっぺんから爪先まで、品定めするみたいに視線でつう、と辿ってから、期待外れって顔をする侑吏くん。そんな彼をぎろりと睨んだ。


浴衣着るのって結構時間かかるんだよ。侑吏くんのためになんか、着るわけない。



「見たかったなー浴衣」

「……思ってもないくせによく言う」

「寸胴だからそれなりに似合うんじゃねーの」



全然褒めてないな。
むっとしつつ改めて侑吏くんの全身を見る。


私服を見るのは初めてだ。
さすがは侑吏くん。外面人間だけあって、私服まで抜かりない。

シンプルだけど、組み合わせにセンスが試されるような服をまるで雑誌のモデルみたいに着こなしている。