「そうそう、それそれ!! いやあ、佐和くんってセンスあるよね〜。厄介純情って!」
少しも遠慮しないでげらげら笑う麻美を尻目に私はふてくされる。
爆笑したこと覚えておきなよ、いつか倍返してやるんだから、と心に誓った。
「で、花乃は大嫌いと吐き捨てた、と……。佐和くん相手になかなか強気ね」
別に、強気とかそういうのじゃないし。
「だって、大嫌いだから」
大嫌いって思った。
思った瞬間口から滑り落ちた、ただそれだけのこと。
「あの整った顔を目の前にしてそんなこと言えるの花乃くらいじゃない?」
「それくらい大嫌いなのっ!」
勢いよく言い返しながら、
そういう麻美だって誰にでもズバズバ言い放つタイプのくせに、と思う。
その直後、私の背後のなにかに気づいた麻美が「あっ」と目を見開いたけれど、そんなことには目もくれずに
私は導火線に火がつけられたように口を開いた。
「だいたい、あんなの反則だよ。裏切り行為。いかにも爽やか好青年ですぅ〜って装ってるくせに仮面が外れたらあれはなに!?ただの詐欺師─────」
「それ、誰のこと?」
後ろから聞こえたどす黒い声。
目の前の麻美は、あちゃーって顔をして頭を抱えている。
その一瞬で状況を察した。



