「あー、どうぞどうぞ持ってって」



私をよそに、胡散臭い爽やかスマイルを浮かべた佐和くんと麻美の間で会話が進み、気づいた頃には交渉が成立していた。



ていうか、侑吏くんの言う“こいつ”って私のこと?

ようやく頭で理解したと同時に、侑吏くんが強引に私の手を引いて立ち上がらせた。




「は?」



思わず声が漏れると、侑吏くんは私を睨む。



「いいから来い」



腕を引かれて、どんどんと廊下の方へ向かっていく。



「ちょ、っと待ってよ!」



ガン無視。
なんて横暴な、と思いながらも仕方なくついていく。


そして、急に立ち止まったかと思えば。



「スマホ貸せ」

「は?」


命令口調。
もちろん、素直に従うはずもなく。



「だからスマホ」

「なんでっ?」

「何でもいいだろ」



しばらく抗議を続けたけれど、侑吏くんは一歩も引かない。
最終的には私が折れて、ポケットからスマホを取り出して侑吏くんに渡した。


我ながら大人な対応だと思った。



「パスワード」

「個人情報!」

「いいから早く」

「……0914」



私の個人情報を掌握した侑吏くんを恨めしく見つめる。

なんで侑吏くんなんかに……と思っていると、当の本人は何やら自分のスマホも取り出して操作している。


何してるんだ、と思った瞬間、スマホが返された。