とはいえテストは明日なわけで、いつまでもこうしてはいられない。
せっせと侑吏くんのノートを写し終えて。



「なんで、ここの “けり” は詠嘆になるのっ?」




わからないところは質問攻め。
侑吏くんは呆れ顔で、でも、ちゃんと答えてくれる。



「文脈的にその “けり” を過去で取るとおかしいだろ。つーか、歌の中で使われる“けり”はほぼ詠嘆だっつったよな、さっき」

「うっ、そうでした……」



メモを取りつつ、うなだれると侑吏くんが追いうちをかけてくる。



「要領悪いんだからとりあえず回数こなして叩き込むしかないんだよ、おまえの場合」

「わかってるよ!侑吏くんと違って私は一個覚えたら十個忘れるの!」

「開き直るなよそこで」


「……。で、ここの“なり”はどうやって推定だって判断するの?断定でもいけそうじゃない?」


「馬鹿。いけねーよ、上の動詞が終止形に活用してるだろ」




さも当然、という風に言うけれど。




「……どういうこと?」



私にはさっぱりだ。
そんな私の様子に侑吏くんはため息をついて。



「だから、まず上の動詞に注目するんだよ」

「うん」

「で、この動詞がどう活用してるかっつーと……」



教科書を使って説明してくれるから、身を乗り出して聞く。



なんだかんだ、やっぱりわかりやすいんだよね。
こんがらがった糸を解くような解説で、すんなりと頭に入ってくる。