「ていうか!」
じわりと心の内を侵食しかけたなにかを振り払うように口を開く。
「これまで何回か佐和くんの話したよね?そのとき麻美何にも言ってこなかったじゃん!」
そうだ。
たしか、そのときも私『佐和くんって爽やかでいいよね』的なことを言っていたはず。
「えー?だって面白いんだもん。花乃が佐和くんのこと『爽やかイケメン』ってあまりにも絶賛するからさ〜。しばらくそのまま放っとこうかなって」
にやにやと含み笑いする麻美に、思わずがっくりと肩ごとうなだれる。
元凶はここか。
麻美がちゃんと教えてくれていれば、勝手に期待して勝手に裏切られる……なんてことにならずに済んだのに。
とたんに麻美のことが恨めしく思えてくる。
「まあ、花乃が勘違いするのもわからなくはないけどね。佐和くんて、身なりはすっごくきちんとしてるもん。柔軟剤の匂い漂わせてそう」
「……」
「まさに花乃の好みど真ん中って感じだよねえ。正直、見た目だけなら仁科くんより佐和くんの方が好きそうじゃん」